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お役立ちコラム

2019.12.03

| 歯科衛生士について

大規模震災における歯科衛生士さんの存在意義

自然災害の多い国、日本

今年発生した台風19号の雨量は「100年に一度」のレベルを超えた、と報じられました。防災科学技術研究所が発表した分析結果によると、千曲川、阿武隈川流域で100年に1度と想定される量を超えていたそうです。これらの分析結果によると、地球温暖化により、20世紀には100年に1度の頻度だった豪雨が、21世紀には約30年に1度になってしまっているそうです。2046〜2065年には十数年に1度、2081〜2100年には8〜10年に1度、平均すると生じるようになる、とも指摘しています。

震災時に後回しになりやすい「歯磨き」

口腔ケアまでの十分な水が確保できない

災害時にはどうしても飲料水や食料などの確保が優先されてしまい、歯磨きが後回しになってしまう場面が予測されます。また、市や県の職員も被災者の安否確認や全体の被害状況・怪我人や病人への救護活動、避難所の状況管理などを優先するので、被災者の口腔ケアまで意識がまわらないのは当然です。

阪神・淡路大震災の震災関連死で最多数を占めた「誤嚥性肺炎」

1995年に起きた阪神・淡路大震災。震災による総死者数6,434人のうち、圧死などの直接死は5,512人であるが、震災後2ヵ月以内に起きた「災害関連健康被害(災害関連死亡)」の死者数は14.3%も占める922人にのぼった。その災害関連死のうち最多数を占めたのが「肺炎」であり、そのほとんどが誤嚥性肺炎でした。

誤嚥性肺炎とは

お年寄りになると嚥下機能(ものを飲み込む力)が弱くなってしまい、誤嚥(飲食物や唾液などが気管に入ってしまうこと)を起こしやすくなります。そして、大災害の後に起こる強いストレス等によってさらに体の免疫力が弱くなってしまいます。そんなときに口内の清掃状況が悪いと、大量の細菌が肺に入って肺炎を起こし、誤嚥性肺炎にかかってしまいます。

これを裏返すと、口腔ケアを少しでも日ごろから意識し口腔内環境を管理しておけば、お年寄りの肺炎の予防に効果的であるということが分かります。口腔内の細菌が減少すると、肺の中に垂れ込んでしまう歯周病原菌も減るので、この誤嚥性肺炎の発症リスクはより少なくなります。

誤嚥性肺炎への対策

この震災での経験がきっかけとなり、2004年の新潟中越地震の際は歯科医師や歯科衛生士が避難所を回っ
て口腔ケアと口腔衛生指導に貢献された結果、大多数の誤嚥性肺炎での災害関連死を防ぐことができたそうです。

また2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震では、自らも被災した地元の歯科医師や歯科衛生士たちが中心となり、歯科大学・歯学部や全国から応援に駆けつけた歯科医療メンバーと連携しながら、被災者に対して応急歯科診療や口腔ケアによる誤嚥性肺炎の予防などを行いました。

東日本大震災と誤嚥性肺炎

それでも東日本大震災では肺炎で亡くなった方がとても多く、震災から約1〜2週間後に肺炎で死亡した人の数が最も多かったと報告されています。1000年に一度と言われる大災害です。飲料水さえ確保が厳しい状況の中で、ご家族・友人を亡くされた方々や住まいや仕事、故郷を失った方々、慣れない避難所生活などの肉体的・精神的ストレスは計り知れません。また、避難所を運営・管理する職員側も人手不足・情報不足の中で被災者の口腔ケアまで出来るはずがありません。

東日本大震災での歯科衛生士さんの活躍

岩手県では沿岸地域で約半数の歯科医療機関が被災した中で、岩手県歯科医師会を中心として歯科治療の医療チームが編成されました。また、愛知県や岐阜県はそのチームに歯科診療者を派遣したり、日本歯科衛生士会のボランティア支援として、愛知県・岐阜県、他5県から歯科衛生士が被災地に向かいました。

震災発生から約3週間後、被害が甚大であった6市町村に向けて出発。当時はボランティアの人達の宿泊が不可能であったため、片道3時間以上ある被災地まで往復しながら支援を行い続けるという大変な活動だったそうです。

歯科衛生士として行ったこと

受診希望者の誘導や問診など、歯科診療車の中では治療のアシスタント業務を行ったそうです。避難所では巡回歯科診療の案内を行ない、歯科保健指導は,口腔衛生用品の配布と使用方法の説明,そして避難所に訪問し、口腔衛生状況の把握に努めました。

水が不足していること、プライバシーを保てる空間が少ないので口腔ケアをしにくいことなど、避難所特有の課題が浮き彫りになりました。そこでボランティアの歯科衛生士さん達は、口腔衛生用品の種類や量が少ない状況下でいかにしてお口の中を清潔に保ったら良いのかを被災者の方々に伝えました。また、被災者の困っている事を丁寧に聞くことで、歯科医師に話しずらい悩みや相談などをすくい上げ、両者の橋渡し役を担いました。

今後さらに高まる歯科衛生士のニーズ

地震・台風・豪雨ー。100年に1度と言われる災害が起こる可能性が20世紀に比べて3倍以上も高くなっている日本。災害と日本は切っても切れない関係になりつつあると言えます。そんな中で歯に関するエキスパートでもある歯科衛生士という存在は今後ますます貴重な存在であると言えます。お口の中の状態が体全体に響いてくるとは、一般の人はなかなかご存じありません。日頃の歯のケアの大切さ・避難所での歯磨きの大切さを伝えられる伝道師であり、ご自身がたくさんの人の命を救う存在なんだということを誇りに感じて頂けたらと思います。