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お役立ちコラム

2019.11.29

| 愛知・岐阜・三重の歯科衛生士

愛知県の歯科医院で犯罪が多発。法律を遵守し、安全安心な医療行為を

無資格助手に衛生士業務 報酬詐取容疑も、岡崎の歯科医逮捕

2019年10月、歯科衛生士の資格がない歯科助手に患者の歯石を除去させたなどとして、愛知県警は16日、歯科衛生士法違反と詐欺の疑いで、愛知県岡崎市の歯科院を営む歯科医師を逮捕しました。報道された内容によりますと、

①「歯科衛生士免許を持たない歯科助手が歯石除去をしている」という通報が半年前にあった

②県警は該当歯科医院を捜索し、カルテや預金通帳などを押収。カルテと患者の話に矛盾があり、不正請求が発覚

という経緯とされています。調べに容疑者は「私から歯科助手に歯石除去などの行為を頼んではいない」などといずれの容疑も否認しています。

歯科衛生士と歯科助手の違い

歯科衛生士の役割

「歯科衛生士」は歯科衛生士法に基づいた国家資格であり、その資格取得について修業年限、時間数、必修学科目が明確に規定されています。歯科衛生士は、患者さんに対して歯科予防処置・保健指導・診療補助などの歯科医療業務を行い、仕事内容は大きく分かれて三つあります。

・予防業務・・・「むし歯」「歯周病」(歯の二大疾患)を予防する処置として、「フッ化物塗布」等の薬物を塗ったり、歯垢(プラーク)や歯石など、口腔内の汚れを専門的に除去します。(機械的歯面清掃)。

歯科衛生士は、このような歯科予防処置の専門家です。

・診療補助・・・歯科衛生士は歯科医師の診療を補助するとともに、歯科医師の指示を受けて歯科治療の一部を担当するなど、歯科医師との協働で患者さんの診療を行います。

・保健指導・・保育園、幼稚園、小学校、老人ホームなどで歯磨きの方法を指導します。虫歯や歯周病は生活習慣病であるため、患者さん自らが生活習慣を改めることが予防につながります。そのため、歯科医師・歯科衛生士の専門的なアドバイスが患者さんにとって大きな気づきとなってきます。最近では、食事の正しい食べ方や噛み方を通じた食育支援、高齢者や要介護者の咀嚼や飲み込み力を強くする摂食・嚥下機能訓練も注力されています。

歯科助手の役割

歯科助手は、歯科医院などで受付の事務や診療のためのアシスタントをする職種です。具体的には、予約管理や患者対応などの受付業務、会計管理やカルテファイルの作成や管理、診療報酬計算など多岐に渡ります。治療に関する業務としては、患者さんの誘導や器具の準備、洗浄、滅菌処理、片付けなどです。

歯科助手ができない業務

歯科衛生士の資格は国家資格であるのに対し、歯科助手に就業するのには何ら法的な基準はありません。通信教育等でも民間資格を取得可能です。患者の口腔内に直接触れるような医療行為や予防処置、歯磨き指導などは行えません。

このように歯科衛生士(医療業務従事者)と歯科助手(一般事務職)には大きな違いがあります。歯科助手の医療行為は犯罪となり、歯科医師だけでなく、違法行為を行った歯科助手も逮捕されます。

昔は歯科衛生士や歯科助手の方が少なく、人手不足のために、歯科助手による歯石除去などの違法行為が見逃されていたようです。しかし現在では違法行為が発覚すると、必ず逮捕されます。「知らなかった」では済まされない犯罪ですので、是非注意してください。

違法行為の具体例

歯科助手が行ってはいけない行為として、

・麻酔注射を打つこと
・歯垢や歯石の除去(スケーリング)
・詰め物や被せ物をつける
・レントゲンのセッティングや撮影
・噛み合わせをとる行為
・フッ素を塗る
・歯磨き指導を行う

等が挙げられます。もし歯科医師にこの様な業務を依頼されても、歯科助手はこの様な違法行為を行ってはいけません。ただし、唾液をとるバキュームは歯科助手の行為として行っても良いとされています。近年では、全国でこのような歯科医師法違反容疑で歯科医師と歯科助手が逮捕される事件が起きています。歯科衛生士のいない歯科医院も全国には多数あり、小さな診療所ほどこのような違法行為が行われやすい傾向があります。一部の心無い歯科医師のせいで歯科業界全体の信頼が損なわれており、このような犯罪には絶対に巻き込まれないように注意しましょう。

診療報酬を不正請求 名古屋市東区の歯科医師と歯科衛生士を逮捕

 

2019年10月、歯科医師が海外渡航などで不在の間に歯科衛生士が医療行為をしたとされる事件で、愛知県警は23日、診療報酬をだまし取ったとして、詐欺の疑いで、歯科医師で「カフェ・ロラ松本歯科」(名古屋市東区)の院長、松本健容疑者(78)=同区=と、歯科衛生士、両坂久美容疑者(50)=同市西区=を再逮捕しました。

逮捕容疑は二〇一七年七月~今年四月ごろ、松本容疑者の海外渡航中、両坂容疑者が無資格で患者の歯を削るなどの診療をした上、診療報酬を県後期高齢者医療広域連合などに不正に請求し、計約四十万円をだまし取ったとされる。

歯科衛生士が行ってはいけない業務

・抜髄
・歯牙の切削
・切開や抜歯
・レントゲン撮影
・インレー(歯に詰め物を詰める)
・医師のいない歯科衛生士単独での治療
・歯石除去術のための鎮痛処置を除いた薬剤の皮下注射や歯肉注射
・冠の装着(虫歯や外傷により歯質が大きく破損した時に歯全体にかぶせる修復物をつける)

これらの業務を行うと歯科衛生士法違反で逮捕されます。

相次ぐ愛知県の歯科医院での不祥事

上記で挙げた事件をご覧の通り、ここ1、2ヵ月だけでも愛知県の歯科医院で違法行為により逮捕者が続出しています。小さな個人院から大きなグループ医院のクリニックなど、全国で歯科医院は山ほどあります。儲け主義・商業主義に走る歯科医院もあれば、本当に患者さんのことを想って診療を案内する良心的な歯科医院もあるでしょう。それを患者さんが真に見極めるのは、プロでもない限り難しいのではないでしょうか。

たとえ院長に指示されたとはいえ、何も知らない患者さんに対して、資格を持たないあなたが治療を行っては決していけません。「モラル」とは道徳や倫理という意味です。最後に問われるのは私たち一人ひとりのこのようなモラル、道徳心、そして人としての良心ではないかと思います。