お役立ちコラム
2020.11.08
| 歯科衛生士について歯科衛生士はどこまでできる?業務範囲とやってはいけないこと
歯科業界の抱える問題として、「人材不足」が挙げられます。
この問題が結果として歯科衛生士さんや歯科助手さんの業務負担が大きくなり、場合によっては業務範囲外のことまでさせられてしまい事件となったケースがあります。
2019年1月に、無資格の歯科助手に歯のX線検査をさせたとして、歯科医師と助手、カウンセラーの計11人を書類送検されました。調べによると「医師が4名しかおらず、診察や治療で手が回らず、休憩時間などを確保するために助手らが代わりに撮影していた」と供述していたそうです。
コンビニの数より多いと言われている歯科医院。
経営状況から人材確保が困難になり、人手不足に陥っているクリニックも少なくありません。
少ない人手でクリニックを運営しなければいけない苦しい状況があったのでしょう。
しかし、歯科助手や歯科衛生士の業務違反は、行わせた歯科医師だけでなく、行ったスタッフ自身も罰せられます。
今回は歯科衛生士さんの業務範囲とやってはいけないことをご説明します。
歯科衛生士のできること・やってはいけないこと
歯科衛生士の業務範囲に関しては、「歯科衛生士法」と「保健師助産師看護師法」に定められています。
歯科衛生士法第13条の2(歯科医師行為の禁止)
「歯科衛生士は、歯科診療の補助をなすに当たっては、主治の歯科医師の指示があった場合を除くほか、診療機械を使用し、医薬品を授与し、又は医薬品について指示をなし、その他歯科医師が行うのでなければ衛生上危害を生ずる恐れのある行為をしてはならない。ただし、臨機応急の手当てをすることは差し支えない。」
この上記の記載から、歯科衛生士はある条件下であれば、歯科医師からの指示で診療機械の使用・医薬品の授与・医薬品についての指示をすることができるということになります。これは例えば、歯石取りやホワイトニング行為などについては歯科衛生士が行えるというように解釈されています。
しかしこのような歯科衛生士が行う診療補助についての範囲は、歯科医師の判断に委ねられてしまうと言えます。
任せる歯科衛生士の経験やスキル・知識を鑑みて、「可能」と歯科医師が判断した場合、診療補助として医療行為を行うことができ、法的にも違反にはなりません。しかし歯科医師がその判断を誤った場合、歯科医師だけでなく任された歯科衛生士にもその結果は重くのしかかります。
このようなことから、歯科医師は対応する歯科衛生士の経験や普段のスキル・能力について正しく認識・把握し、判断をする必要があります。
歯科衛生士はX線撮影できるの?歯科助手は?
X線撮影は「診療放射線技師法」の第4章24条で医師、歯科医師、診療放射線技師の有資格者だけができる医療行為だと定められています。歯科衛生士も歯科助手も撮影は禁止されています。
ただし、撮影の位置を決めるなど、機器の操作自体は準備の範囲のため、歯科衛生士や歯科助手でも可能です。
認められていないのは、患者さんの照射される位置・体位を目視し、X線を発生させる装置の設定を確認し、そのうえでスイッチを押すことです。
放射線学について無知な人間が放射線を他人に当てることがどれ程危険かご存知でしょうか。
放射線を浴びることで、発癌リスクの上昇など、様ざまな悪影響が懸念されるからです。
絶対的歯科医行為
歯科医師が行う業務には2種類あり、「絶対的歯科医行為」と「相対的歯科医行為」と言われています。
絶対的歯科医行為は「歯科医師のみが行うことができる医療行為」であり、歯科衛生士はやってはいけません。
具体的には、
・歯や神経を抜く
・歯を削る
・歯に詰め物を詰める
・被せ物を歯につける
・歯石除去のときの除痛処置をのぞいた各種薬剤の皮下、皮内、歯肉などへの注射・・など
相対的歯科医行為
相対的歯科行為に関しては、表面麻酔薬の添付、歯石除去、ホワイトニングなどといった業務が当てはまります。
しかし先ほども述べたように、歯科衛生士の経験やスキルによって行える医療行為の範囲も大きく変わります。
インレーの咬合調整などは難易度が高いため、スキルの高い歯科衛生士しか任せることはできないので、歯科医師の判断を誤らないよう注意が必要です。
また、相対的歯科行為はあくまで歯科医師の指示の下であれば歯科衛生士は行えますが、万が一単独で行った場合は歯科衛生士法に反することになります。
しかし、過去に歯科医師がいない時に歯科衛生士がX線撮影や絶対的歯科医行為を行ったことで、歯科医師や歯科衛生士が逮捕されてしまったという事件もありました。
まとめ
いかがでしたか?
歯科医院は様々な職種が連携・協力しながら運営されています。昨今の深刻な人材不足が歯科衛生士の法令違反という大きな歪みとして問題となっています。
歯科衛生士や歯科助手が適法に働くことができるように、院内で歯科医師・歯科衛生士・歯科助手それぞれが業務範囲を明確にする業務基準書を作成することが重要です。業務を分かりやすく掲示することで、従業員の安心感に影響し、患者さんから信頼を得ることにもつながるでしょう。